24時間耐久ツーリング
本来ならば、バイクにテント載っけて遠くに行く予定だった。
ひたすらバイクで遠くまで走り、
人が少ないテント場にテントを張り、
火器を駆使して食事を作り、
そのままテントの中で眠る。
それを繰り返すような、そんな旅をするはずだった。
しかし、それが堂々とできない。
どこかに泊まる、というと白い目で見られる。そんな状況だった。
そんな2020年の夏、ならばこんな旅はどうだろうか?と閃いた。
高速道路を使わずに、24時間でどこまで行って帰って来れるのか?
日帰りツーリングチャレンジである。
2020年8月19日 23時50分
東京都八王子市内 某コンビニ駐車場
(♪:某番組SE)
コンビニの前でヤンキーがたむろしていた。
なんでも仲間の1人が警察が来たからって逃げ出してダセぇ、という話だ。
「俺なら逃げねぇぜ」みたいな事をリーダーっぽいのが言っていた。
そんな事を小耳に挟みながらコンビニに入り、コーヒーを買う。
どこまで行けるか検討はつかないが、とりあえずは甲州街道を西へ行き、松本から白馬を抜けて日本海を目指すことにした。
コーヒーを口に含み、ヘルメットを被り、日付が変わった事を確認して出発。
24時間ツーリング開始である。
・・・コンビニの駐車場に自分のバイクと入れ替わりでパトカーが入ってきた。
ミラー越しに見ていたが、宣言通りさっきのヤンキーは逃げなかった。えらい。
甲州街道を西に走る事2時間弱、甲府のガソリンスタンドで給油兼小休止。
途中の大垂水峠に走り屋らしき人たちがいたこと以外は特筆することはなかった。
というのも、「甲府盆地は裏庭」と思うくらい甲府までの道は色々走っており、
夏は深夜ツーリングもよく行っているので、ただひたすらに走り慣れた道、という感覚だった。
しかし、この先はそうはいかない。
甲府から先に行くとしたら普通は中央道を使う。そのため、甲府から先の甲州街道は走ったことがなかった。
そこまでワインディングはないだろうが、慎重に、でも楽しんで走る。
そこから「ゾーン」に入るまで、時間はかからなかった。
スポーツでよく話題になるゾーンだが、僕は登山の時とバイクツーリングの時にゾーンに入った経験がある。
前者では、いくらペースをあげても疲れることなくガンガン進むことができる、いわゆるクライマーズ・ハイ状態になる。
後者では、「このままどこまででも走っていられる」「むしろどこまで走ることができるか挑戦したい」そんな感覚になる。
その感覚を試したいからこその、この挑戦でもあるのだ。
このまま、暗いうちに、暑くならないうちに、ただひたすらに走る、走る、走る・・・
それから2時間、国道20号の端点を超えた直後、塩尻のマクドナルドで朝食をとる。
ちょうど朝マックが始まる午前4時であった。
ここまで180km。まだ旅は始まったばかり。
腹ごしらえをすまして出発する頃には、空が明るくなり始めていた。
朝靄の安曇野を抜けて、次の休憩は朝6時少し前、白馬駅を越えた直後くらいの名もなき駐車場(かどうかも怪しい空き地)だった。
モルゲンロートというやつがあまりにも綺麗過ぎて、思わずバイクを止めてしまった。
高校生の頃までは山屋だった記憶が蘇ってきた。また北アルプスに登りたいものである。
白馬からは標高がどんどん下がり、それにつれてどんどん暑くなってきた。
糸魚川で日本海に突き当たる。迷わず西を選び、次の休憩は道の駅親不知。一度来てみたかったところである。
海岸に出ることができた。砂というよりは石の浜で、天然の足ツボマッサージ場だった。
そしてなにより、この光景である。
天下の険、親不知。
これを抜けるためにわずかな陸地を辿った国道。
大胆に海に突き出る高架を作った高速道路。
ここまでダイナミックな土木構造物はそうそうないだろう。
すごく、好きな光景だ。
だがしかし・・・暑い。暑すぎる。
海抜0mとはいえ、まだ7時前なのに・・・嘘だろ・・・
そこからは国道8号をひたすら西進する我慢の時間帯。
ちょうど朝の通勤時間帯とも重なり、富山市中心部に向けて渋滞していた。
暑い。ただひたすらに暑い。
富山市内でガソリンを入れて、さらに西に向かう。
高岡で北に進路を変えて、海岸線に出る。
お目当てはオサレな道の駅、雨晴である。
これが、道の駅・・・だと?!
オサレにも程がある!
建物に入って涼もうと思ったら、ちょうど氷見線の列車がやってきた。
しかし、良い天気である。
10時の開店を待って、パフェを食べる。
本来、僕は辛党なのだが・・・我慢ができなかった。
ああぁ、生き返る・・・。
そういえば、この時どこかのテレビ局が取材に来ていた。
タレント無しの食レポって、あーやって作るんだなぁ、と思いました。まる。
ここまで来たら、もう、あの場所を目指すしかない。
八王子を出てから11時間20分、
距離にして435km、
・・・やった、やったぞ。たどり着いた、、、
千里浜なぎさドライブウェイ!!
・・・いや、実は最初から目標にはしていたのだが、本当にたどり着けるかが不安で・・・
しかも最高の天気!よき!
途中の道の駅でアイスを食べて体を冷やした後、南端までのんびりと流した。
達成感に浸ってはいるが、そこまでのんびりしてはいられない。
ここから高速を使わず、この日のうちに八王子に帰らないとならないのだ。
ここから2時間ほどは、正直、あまり記憶がない。
石動の駅前を通って、砺波の中心街を通って、どこかのコンビニで休憩して、八尾から東進して国道41号にぶつかったところで、給油ついでに大休止。
恐らく、ここまで熱中症気味だったと思う。
対策として冷感タイツを上下着用していたが、それでもやはり真夏の昼間は暑い。
休憩できるコンビニはいくらでもあったが、休憩回数を増やすとその分距離が稼げないと思い、この間1回のみの休暇だった。ここが反省点だろう。
※このツーリングの後、この反省からパニアケース内に入れることができるコンパクトクーラーボックスを導入した。なお、今現在このクーラーボックスは道の駅で買った野菜類を持ち帰るのに非常に役立っている。
しかし、これでようやく平地は終わり、ここからは標高をひたすら稼いでいく。
涼しくなるはずだ。
直後の道の駅スカイドーム神岡で休憩。
ここでは涼みがてらカミオカンデの勉強をした。
一粒ひとつぶが意外と大きいのだなぁ、と。
あと牛乳が美味しかった。
少し東進して道の駅奥飛騨温泉上宝でも小休止。
家に帰ってから知ったのだが、この日は新穂高ロープウェイの夜間運行日だったそうで、ここにテント張って星空を見に行くのもよかったなぁと、少し後悔していたりする。
モン○ンとのコラボグッズを漁って(これが目的)から出発。
ここから松本までは一度走ったことがある道。
安房トンネルを抜けて、そこからの158号は高校時代の山岳部の夏学校で上高地へアプローチするのに使った、馴染みのあるところ。
そして松本からは・・・今朝走った道である。
日が暮れ出した19時ごろ、
国道20号に入った直後の道の駅小坂田公園に着いた僕は疲労困憊だった。
・・・いや、ここから八王子まで下道は、、、もうムリ。限界。
岡谷から高速使って、気楽にのんびり帰ろう。
心が折れた僕は岡谷から高速乗る気満々で出発した。
そうして道の駅を出た直後の青看にこう記されていた。
甲府 82km
これを見た僕はこう考えた
・・・行けるやん!
だってさ、82kmってことは、2時間弱で甲府やろ?
甲府は僕にとっては裏庭みたいなもんだから、甲府から八王子までは実質ノーカン。
行ける行ける・・・!!
(注:甲府から八王子までの道のりは90km〜100kmほどある)
塩尻~甲府の中間地点くらいの富士見で休憩し、予想通り2時間ほどで裏庭・甲府にたどり着いた。
時刻は21時
この時間帯なら甲府から八王子まで下道でも2時間程度。
・・・これは、勝ち申した。
コンビニで軽食を食べながら、大菩薩ライン経由で帰ってやろうかと考えてしまうくらいには元気になっていた。
なんたって、甲府にまで帰ってきたのだから。
(注:甲府から八王子までの道のりは90km〜100kmほどある)
結局、甲府からは大人しく甲州街道を走って、23時過ぎに八王子の自宅に到着。
【結論】
八王子からだと、高速を使わずに
23時間 828.7km走って
石川県の千里浜なぎさドライブウェイまで往復できる
加えてお尻が痛くて、もうしばらくバイクは乗りたくないって思いました。
・・・
帰り着いた時は・・・ね、
また1週間もしたら日帰り600km級のツーリングしたりしたときの話は、また別の機会に・・・
でも、今振り返ってみても・・・
この旅1番の思い出は、スタート直後の
「ヤンキー、宣言通り警察から逃げなかった」
ってことなのは・・・釈然としないなぁ・・・